其の44 抱きあげ
「ぐうああああああああああああああああ!!!ぎゃああお助けぇええええええ!!!!」
「うるせえ!!黙れ!!!!俺がどれだけ心配したと思ってんだ!!俺だけじゃない、叔父さんもずっとアンタを心配して・・・。
俺たちはずううううううっと探してたんだぞ!アンタのことを!」
「さ、探す価値なんてないだろう。僕にさ!ほっとけよ、犯罪者のことなんか」
「な、何言ってるんですか」
「思い出したんだろう!僕が何をやったかさ!」
「でも、今回は事件を起こしてないじゃないですか!」
「そうだね。確かに今回、事件は起こしてないよ。でもさ、それで僕がしたこと全部がなくなったことにはならないだろう?
二人の人間を殺した、っていう事実は無くならないんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「わかっただろう。こんな犯罪者が君の傍にいたら人生駄目になるよ。ね、この手離して」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「ね?」
「・・・・・・・・やだ」
「え、」
「いやだ!」
「いてててててててててててて!手が食いこんでますよ!足、痛い!」
「嫌です!離しません」
「痛い!ばか!足、もげるわ!」
「え、も、もげるのは困ります!」
「隙あり!!」
其の45 梃子がかり
「・・・逃がしませんよ!足立さん」
「し、しつこいなぁ!君も!」
「当たり前でしょう!足立さんが欲しくて俺、神様にやり直しをお願いしたんですよ。
一度目に築いた絆もチャラにして・・・それでも、足立さんの傍にいたいから・・・俺」
「・・・・・・・・・・・」
「好きって言ってくれたじゃないですか。前回の記憶が最初からあったんですよね、足立さん。
それでも、俺と一緒にいたいって思ってくれたんですよね?なのにどうして今更逃げるんですか」
「・・・・・・・・・・・」
「どうしてですか」
「・・・・・答えるから、ちょっと手、離して」
「逃げない?」
「今は」
「・・・・わかった」
其の46 しぼり芙蓉
「・・・・そんなにしっかり抱きつかなくても今は逃げないよ」
「・・・・・・・・・・・・どうして逃げたんですか」
「君が思い出したから。
僕さ、無かったことにしようとしたんだ。過去にしたこと全部。
事実、今回は事件起こしてるわけじゃないしね。だから、君さえ思い出さなきゃ僕が
人を殺したことも全てないことに出来ると思った。
でも、君は思い出した。卑怯にも僕が無かったことにしようとしてたこと全部、
君は知っている。覚えている。
人を殺したこと、町の人間を危険にさらしたこと・・・君を」
「・・・・・・・・・・・」
「君を殺そうとしたこと」
「・・・・・・・・・・・」
「君が僕を追い詰めてテレビの中で戦った時、僕は心底君が憎かった。
消えてしまえばいいのにって思ったよ。君に銃を向けて殺してやるって、本気で思ったんだ」
「・・・今も、消えて欲しいって思ってる?」
「思ってない!」
「なら、いいじゃないですか。一緒にいよう」
「出来るわけないだろう。僕にそんな資格無いよ」
「無くていいですよ。そもそも一緒にいるのに資格がいる方がおかしな話じゃないですか」
「資格云々っていうよりは、単に自分がしたことが許せないから君とはいられないって言ってるの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「む、無言できつく抱きしめんのやめて!肋骨がミシミシ言ってる!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「うええええ。胃が圧迫して気持ちわるうううう。昼に食べたカップめん出る・・・」
「・・・ちょっとやせてる。どうせ、ろくなもん食って無かったんでしょ」
「う、うるさいよ」
「誰かがしっかり面倒見てあげないと、足立さんは長生きできませんね」
「大きなお世話だよ!別に長生きなんてしたくないし。・・・もういいだろ、僕、行くから」
其の47 立ちかなえ
「離して、もう、行くから」
「嫌だってさっきから言ってるじゃないですか、あんたそれでも頭脳派?
頭悪いですよ」
「頭悪いのは君の方だろう。僕の言ってることまったく聞きやしないよ」
「そうですよ、どうせ頭悪いですよ。だから、足立さんの言うことなんて聞いてやんないから。
このままずっとしがみついてやる。死ぬまでずーーーーと」
「・・・なんで、そんなに僕なんか気にいったんだかね」
「笑った顔がすんごく好みだったから」
「え、そうなの」
「足立さん、へにゃって笑うんですよ。それが俺、大好きで」
「笑顔だけなの?気にいってんの」
「ううん。まだありますよ。聞きたい?」
「ま、まあ、自分がどう思われてるかっていうのは気になるかな」
「わかりました。でも、いっぱいありすぎて口では伝えきれないので、一緒にいて感じとってください」
「あのねー・・・」
「罪を悔いてるなら尚更、俺から離れたら駄目ですよ。俺のこと申し訳ないと思うんなら、俺のこと幸せにしてくださいよ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「それで、この町をずっと守ってくださいよ。刑事さんならできるでしょう」
「・・・もう辞めたよ。辞表出したんだ」
「それ、叔父さんが持ってます。叔父さんが根回ししてくれて足立さんは今は病欠ってことになってるんで」
「・・・・・・・・堂島さん・・・。」
「叔父さんって本当、身内に甘いんです。菜々子も足立さんのしょぼい手品見たいってずっと待ってるんです。
あと、花村も足立さんがいつ帰ってきてもいいようにキャベツひと箱取り置いてくれてるらしいですよ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「俺も、キャベツ料理のレパートリーを増やして足立さんの帰りを待ってた」
「・・・・・・・・・・・・・」
「食べたくないですか?俺のご飯」
「・・・食べたい」
「それなら、一緒に帰ろう。帰ってご飯にしよう。そのあと二人でイチャイチャしましょう。
べったりひっついて、人に言えないことしましょうよ。
その繰返しを死ぬまでやり続ければいいんです、二人で。ね、簡単でしょ」
「・・・・・・・・・・・・それは、僕とじゃなくてもいいんじゃない」
「駄目。足立さんとしかできない」
「きっぱり言うなぁ。・・・後悔するかもよ。僕と一緒にいること」
「かもしれませんね。でも、一緒にいられなかったらもっと後悔する」
「・・・そう、かもしれないね・・・」
「やっと観念してくれましたか」
「・・・まあ、うん・・・うーーーん、でも・・・」
「煮え切らない返事ですねぇ!本当、優柔不断。男ならはっきり決断する!」
「いや、だってさぁ・・・」
「足立さん!!!」
「は、はい!」
「俺、誓います!」
「な、何を?」
「えーー、ごほん。・・・俺は、足立さんが風邪ひいたり、その他もろもろの病気になって病んだりした時も
うるさいくらい元気いっぱいに健やかなる時も、愛っていうか・・・まあ、愛だな。
そういうものをもって、生涯支え合うことを誓います。足立さんは?」
「・・・・・・・・・・」
「足立さんの番ですよ!」
「あぁぁあ!もうチクショウ!右に同じだよ!」
其の48 抱き地蔵
「では、誓いのキスを!」
「・・・いいんだね?」
「うん」
「あの、続きは・・・?」
「あ、うん、いやしたいんだけど・・・」
「だけど?」
「忘れてるかもしれないけど、ここテレビの中なんだよね・・・」
「あっ!!!!!!」
「い、今までの僕らの恥ずかしーやり取りを、他の人が見てるかもしれないんだよね・・・」
「!!!!!」
「でででで出ましょう!!!」
「あ、ちょっ!」
「ほ、ほら早く帰って叔父さんに事情説明しなきゃ!すんごい心配してたんですから!!」
「わ、わかってるよ。・・・きっとすごーく怒られるんだろうなぁ。一発か二発は殴られそう」
「当たり前でしょう。多分、『足立ー!てめー今までどこほっつき歩いてたんだ!バシっ(一発目)。
どんだけ心配したと思ってるんだ!ゴンッ!(二発目)。何があったか知らねえが、刑事が事件ほっぽり出して
どうすんだ!大馬鹿野郎!!バキッ!(三発目)。
・・・言いてぇ、ことがあるならいくらでも聞いてやる。だから早まった行動はするな、わかったか?パシッ(四発目)』
ってとこじゃないですか」
「よ、四発か。・・・ヤバくなったら助けてくれる?」
「やだ。自業自得ですよ。ほら、行きましょう」
「行くか・・・。あ、ねえ」
「なんですか?」
「手」
「て?」
「・・・お手て繋いで帰りましょ」
「・・・うん」
「・・・そういえば今日のごはん、なに?」
「えーと・・・今日は・・・キャベツの・・・」
「・・・・・わ、・・・・・・しい」
「・・・・・・・・・う・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
(ザァァァァァァァァァァァァァァァァーーーー・・・・・・・)
(プツンッ!)
本日を持ちまして、着衣48は終了いたしました。
ここまでご覧くださって本当にありがとうございました。
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